一度は疑問に思うものが、「リノベーション」と「リフォーム」の違いって何が違うの?ということ。どちらも古くなった住まいに手を加えることを指しますが、この二つの違いは何でしょうか。
今回は、「リノベーション」と「リフォーム」の違いをはじめ、リノベーションを検討するに当たって知っておきたい基礎知識を紹介します。
|明確な定義がない!?|
最初にお伝えしておきたいことは、実は、リノベーションとリフォームともに国で定められた明確な定義はないということです。メディアやリフォーム会社、リノベーション会社がそれぞれの解釈で使い分けているのが現状です。どちらの言葉で表現しても間違いではないのですが、住まいに手を加えるときの意図や目的で使い分けられているのです。
主要なリノベーション関連企業が加盟している「一般社団法人リノベーション住宅推進協議会」では、以下のように定義・分類しています。
“リフォーム…現状回復のための修繕・営繕、不具合箇所への部分的な対処。
リノベーション…機能、価値の再生のための改修、その家での暮らし全体に対処した包括的な改修。”
◎リフォーム 「元に戻す」
リフォームは時間を経て古びた内装を新築の状態に近づけるための改修です。例えば剥がれた壁紙を貼りかえる、古くなったキッチンを新しいものに取り替える、等が挙げられます。部分的・表層的な改修工事で、古くなった住まいを新築当時の状態に現状回復するために行われます。
◎リノベーション 「つくり変える」
間取りから内装・配管までをゼロから考え直し、これから住む人たちの暮らしに合わせてつくり替えることで機能を刷新し、新しい価値を生み出す改修をリノベーションと言います。
マンションの間取りは、ファミリーを想定した画一的な間取りになっているケースがほとんど。個室が細かく区切られ、これから住む人のライフスタイルに合わない部分が多くあります。住む人によって心地よい間取り、デザインは異なります。住む人の暮らしに合わせて刷新するのがリノベーションです。
|リノベーションのメリット・デメリット|
●メリット
・今時の間取りや最新の設備にできる
リノベーションは全面改装するものとは限らず、また、リフォームでもフルリフォームとして全面改装することもあります。ただし、劣化する前の状態に戻すのであれば基本的に間取りはそのままであり、キッチンやユニットバスなどは既存製品同等の新品のものに入れ替えることになります。
リノベーションなら、単純に内外装材や設備を新しく替えるだけでなく、今時の間取りに変更し、最新の設備を導入できます。リノベーションなら新築物件同等のスペックの住まいを目指せるのです。
・ライフスタイルや家族構成に合った住まいにできる
リフォームは内外装材に故障が起こる前に前の状態に戻すことが目的ですので、リフォームをしてフローリングやキッチンなどが新しくなったとしても居住者に合った住まいとは限りません。一方、リノベーションは、居住者に合わせて家族構成やライフスタイルに合った住まいに刷新することも目的になるのです。
・好みのデザインの住まいに変えられる
リフォームでも壁紙やフローリングを貼り替えたり、キッチンや洗面台、ユニットバスの交換をしますが、住まいのデザインを一新するのはリノベーションです。例えば、素足で歩けるように無垢フローリングを貼り、ナチュラルなスタイルの内装でまとめたり、モールディングでドア周りや壁の上部をデコレーションするなど、欧米風の住まいにしたりすることができます。リノベーションなら、好みのインテリアスタイルを確立するために位置からデザインしていくことが可能です。
・資産価値が向上する
築年数が経過した物件では、リノベーションによって、住みやすい間取りやデザイン性の高い住まいに改変すると、同程度の築年数でリフォームした物件よりも売りやすく貸しやすくなります。マンションだと一般的に新築時が価格のピークで、新築から数年間の価格の下落幅が大きく、築20年で価格が安定します。築20年程度のマンションをリノベーションすると資産価値が向上することが期待できるのです。
●デメリット
・居住できるまでの期間が長くなる
リフォームで全面改装や、リノベーションで部分改装するケーすもあるため、リフォームとリノベーションの設計や工事に関わる期間は単純に比較できません。しかし、リノベーションは建物に付加価値を付けるものなので、リフォームよりも工事規模が大きくなりがちです。
・工事費用が高くなり、リフォームローンでまかなえないこともある
リノベーションやリフォームの費用は工事規模によるところもあるため、一概にリフォームよりもリノベーションのほうが費用がかかるとは言えません。しかし、スケルトンに解体してフルリノベーションする場合、フルリフォームするよりも費用が高くかかるかもしれません。
・個性的なリノベーションをすると売れにくい
中古物件を購入してリノベーションすると間取りをある程度自由に変えることが可能であり、好きなデザインにすることも可能です。他方で、終の棲家として中古物件を購入してリノベーションした場合でも、結婚や子どもの誕生、進学等、ライフステージの変化によって手放さざるを得ないこともあるかもしれません。そのような時に個性的なデザインにリノベーションすると売れにくさが生じることがデメリットとして挙げられます。
・リノベーションの自由度は物件による
リノベーションの自由度は構造などによって異なるため、物件の見極めが必要となってくることはデメリットとしても言えます。
戸建て住宅の場合、木造軸枠組み工法は間取りの自由度が高く、構造上必要な柱や筋交いを撤去することはできませんが、間仕切り壁は移動することができます。
マンションの場合も、間取りの変更の自由度は構造によります。分譲マンションSRC造のラーメン構造とRC造のラーメン構造、壁式構造がほとんどです。ラーメン構造のほうが、間取り変更の自由度は高く、梁と柱で建物を支えているため、間仕切り壁を自由に撤去することができますが、壁式構造の場合、構造上必要となってくる耐力壁となっている壁は撤去することができません。また、キッチンや浴室などの水回りの設備の位置の移動は、床下の配管のスペースに余裕があると自由度が高いです。さらに、マンションの場合、管理規約でフローリングの遮音性能が定められていることが多く、カーペット敷き込みから他の床材に変えられない可能性があります。
以上、リフォームとリノベーションについて解説しました。大まかにイメージの違いを持っていただけるとありがたいです。
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